雇用保険未加入でも再就職手当てを受け取れる
再就職手当ての支給要件はいくつかありますが、要件のひとつについて、ハローワークは、公式パンフレットなどで「再就職先で、原則として雇用保険に加入することが必要」としています。
しかし、実は、この要件は、厳密には考慮する必要はありません。
なぜなら、再就職手当てに関する法令には、雇用保険への加入が義務として記載されていないからです。
実際に、再就職手当ての申請書類では、雇用保険への加入を確認していません。
そのため、再就職手当をもらうにあたって、再就職先での雇用保険への加入は、必要ありません。
ブラック企業であったり、試用期間などの理由で、会社が雇用保険に加入させてくれない場合がありますが、そのような場合でも、再就職手当ての申請をあきらめてしまうようなことが無いように、注意しましょう。
解説
法令について
再就職手当てに関する法令には、雇用保険法56条の3と雇用保険法施行規則82条があります。
しかし、これらの条文には、雇用保険の加入は、支給要件として記載されていません。
ハローワークに確認しても、「必ずしも、雇用保険に加入している必要はない」との回答が得られています。
なぜ、「雇用保険の加入」と記載されているか
ちなみに、なぜ、ハローワークは、「原則として、雇用保険の加入が必要」と言っているのでしょうか。
これを理解するためには、再就職手当の支給要件には、「一週間の所定労働時間が20時間以上の者」という条件があることを知らなければなりません。
実は、雇用保険法6条7号にて、雇用保険法の適用がない者として、「一週間の所定労働時間が20時間未満である者」が挙げられているのです。
すなわち、雇用保険の恩恵に預かり、再就職手当をもらうためには、一週間の所定労働時間が、20時間以上あることが必要になるのです。
一方で、法律上、「一週間の所定労働時間が二十時間以上の者」は、雇用保険の加入が義務となっています。
これらのことから、ハローワークは、一週間の労働時間が20時間以上の者は雇用保険に当然に加入している、という前提で、(分かりやすくするためかもしれませんが)支給条件として、「雇用保険の加入」をあげているのです。
まとめると、ハローワークは、「一週間の所定労働時間が二十時間以上の者」であれば、法律上、再就職手当ての支給を問題なく受けられるのに、法律上の要件を「雇用保険への加入」と置き換えて、HPやパンフレットに記載しているということになります。
よって、冒頭にも触れたことですが、再就職先で雇用保険に加入していなくても、他の用件を満たせば、再就職手当ては支給されますので、心配する必要はありません。
万が一、ハローワークから、雇用保険の不加入を理由に申請を却下されても、「法令上は、雇用保険の加入は、再就職手当ての支給要件ではない。支給要件となっているのは、あくまでも、週20時間以上の労働をする場合であり、自分は、週20時間以上働くので、雇用保険への加入がなくても、支給要件を満たします」と、法令を根拠に反論すれば、支給を勝ち取ることができます。
上記のように、雇用保険の加入は、法令上の義務ではないことを、申請者から指摘してあげないと、法律上の根拠なく、再就職手当ての申請が拒絶されてしまうおそれがありますので、ご注意ください。