心理学から見た企業選びの注意点-アンカリング効果
さまざまな会社の求人を見比べていると、人間の心理として、給料に注目してしまいます。
給料は数字ではっきりと表されているため、自然と、ほかの会社と比べてしまいます。
そして、給料が高い会社ほど、良い会社に見えてしまいます。
とくに、同じ業界であれば、なおさらです。
たとえば、自動車メーカー会社が2つあるときに、一方は年収400万円で、もう一方が500万円のとき、500万円の会社のほうが良い会社に見えてしまいます。
そして、その500万という数値が、その後の企業選びの基準になってしまい、その数値の近くに気持ちがとどまったまま 、どうしても離れることができなくなってしまいます。
この現象は、たとえ、「会社を給料だけで選ばないぞ」 と心に決めていても関係ありません。
この現象は、心理学では 「アンカリング効果(anchoring effect)」または「係留効果」と呼ばれます。
給料のアンカリング効果の問題点と対策
アンカリングを生む心理メカニズムは 、大半の人を暗示にかかりやすくしてしまいます。
求人情報の中には、このアンカリング効果を利用して、基本給を高く設定している会社があります。
基本給は、ほかの会社と比べやすいため、高くすることで、「求人に応募したい」という気にさせられます。
しかし、給料には、基本給のほかにも、色々とあります。
たとえば、毎月もらえるものに、残業代、役職手当、住宅手当、家族手当、通勤手当、休日出勤手当などがあります。
また、計算はしにくいですが、辞めるときに貰えるものに、退職金がありますし、会社によっては、「公的年金」とは別の、「企業年金」と呼ばれる年金を老後に貰えます。
基本給の数字だけを見ていては、トータルでもらえる金額の本当の差を見落としてしまいます。
きちんと計算すれば、「基本給は5万円の差があるけれど、手当を含めて考えたら、1万円の差しかない」などの発見ができる場合があります。
このように、基本給に着目しすぎず、そのほかの情報もしっかりと把握して検討することで、アンカリング効果を薄めたり 、消すことができます。
つぎのページでは、会社の印象が操作される原因となる心理を紹介します。